スペツナズ
この時代に取り上げるのはちょっと怖いけれど、
この時代だからこそ、しっかり向き合って、感想を書いてみようと思います。
この曲が収録されたアルバム「BASIN TECHNO」のリリースが2016年。
体育くんが20代半ばかそれより前に、こんな曲を作ってしまう知性と才能にしびれてしまう僕です。
その頃の僕はといえば、仕事がしんどくて、ちょっとでも職場に着く時間を遅らせようと、最寄駅からできるだけゆっくり歩くチャレンジをする日々でしたからね。
本題に戻ります。
アルバム「BASIN TECHNO」は、前半にネタ曲が固められていて、
口パクをカミングアウトしたり、
MVあるあるをいじったり、
バンドざまあみろって叫んだ後に、
まさかこんな社会派な曲が続くので、
今どき少ないかもしれませんが、アルバムを順番どおり聴いた人にはすごいインパクトでしょう。
解説できるほど詳しくはありませんが、「スペツナズ」は、ロシアの特殊部隊のこと。
漫画やゲーム、映画の世界では、武器として「スペツナズ・ナイフ」が有名だったりします。
体育くんはゲーマーだし、漫画やアニメ好きだと思うから、作曲のきっかけはそういった文脈だったのかもしれないけど、
ロシアのウクライナ侵攻や、イスラエルの戦争を目の前に、今この曲を聴く僕たちには、ずーんと重たいテーマを突きつけられます。
♪「東の空は 混沌と散弾ファイア」
世界を明るく照らす朝日が昇ってくるはずの東の空が、混沌と散弾で暗い影を落としている。
この後に続く「散った酸 緩慢対応」に、残酷な光景が思い浮かびます。
♪「扇動者真似て積み重ねたタイヤ 怒ってる街の住民は既にライオット」
♪「狂った叫びは 報道管制をイグノアー マッシブライアー ワット ア ファック オフ」
Aメロがir系の韻で統一されていて、それが何となく虚しさや気怠さを醸し出している。
マッシブライアーとは大嘘つきの政治家か、虚言妄言で人々を洗脳する総統か。
はたまた、今の日本人に置き換えれば、
SNS上で真偽不明の情報に群がる自分たち自身のことなのかもしれない、と思ったり。
♪「東の空は湾岸の景を塗った ライジングサンを眩しげに仰いだ」
♪「写真を抱いた泣きじゃくる老婆 待ち望んだ言葉はいつも『ただいま』」
世界がどんな状況でも、やっぱり東の空からは朝日が昇ってくることに気づかせてくれる歌詞。
冒頭の戦争描写から転じて、ここから一気に、そこに生きる人にフォーカスしていくところが印象的です。
♪「全脳帝の命 愛はとうに捨てた」
「全脳帝」という言葉自体は、made by 岡崎体育の造語のようですが、
国家元首の命のもと、「愛はとうに捨てた」と自らを偽る切なさは、かつての日本を含め、現実世界に通じるように思います。
♪「ひび割れた窓 傾いた屋根」
♪「スウェイを何度重ねれば 空が見えるの」
swayには「揺さぶる」といった意味の他に、「支配」や「統治」の意味もあるようです。
窓や屋根が壊れるような物理的な攻撃が繰り返されることを表現していると同時に、
いくら統治者が変わっても、世界から戦争がなくならない嘆きを、この曲を通して「空」に訴えているような気がします。
正直、この曲をちゃんと理解できている自信はないですが、岡崎体育により一層魅了されてしまう曲であることは間違いありません。
次は、「なにをやってもあかんわ」です。