鴨川等間隔
岡崎体育がインディーズ時代に作ったというこの曲。
決して体育くんがそうであるわけではないと思うが、いや、そうかもしれないが、そうではないと信じたいけど、いやしかし、そうなのかもしれない。(できればこっちサイドにいてほしいという願望)
あるインタビューからの引用。
「"これ、岡崎体育っぽい歌詞やな“と思ってくれたんなら、それは僕のキャラクターづけが成功した証拠だと思う」
https://skream.jp/interview/2017/06/okazakitaiiku.php
うん、大成功。
免許更新なんて、何年かに一度のレアなイベントだけど、そこを切り取るセンス。
情景がありありと浮かんでくる歌詞と、ノスタルジックなメロディに、
この先の展開を知らずとも、センチメンタルな気分になる予感。
免許更新後、時間を持て余した「俺」は、どうしようか考える。
♪「誘えるやつも塩田くらいか アイツはいいや また今度飲みに行こう」
「俺」と「塩田」の絶妙な関係性。
誘えるやつ代表の塩田は、きっと「俺」にとって大事な友達で、気が置けないやつなんだろうけど、
だからこそ、センチな気分のときには会わないでおこうって思う気持ち、わかるなあ。
ん、いや、ただめんどくさかっただけか。
ま、いずれにしても、体育くんにとっての塩田が羨ましいぜ。
♪「無意識にまたネイビーブルーを手に取り無難を求めちまうぜ」
結局、一人で服を買いに行くことにした「俺」。
ファッションに無頓着ってわけではないけど冒険する勇気がない自分とシンクロ。
♪「鴨川等間隔 寄り添う恋人たちの心理的距離」
九州に住む自分には馴染みがなかった、この曲のタイトル。
『鴨川等間隔の法則』
鴨川の川岸においてたたずむカップルやグループの間隔が、自然に等間隔になることをいう。(出典:京都通百科事典)
https://www.kyototuu.jp/Life/MannerKamogawaToukankaku.html
なるほど、確かに想像できる風景。
そんな鴨川沿いに佇むカップルたちを眺めながら、
♪「風になびく髪を耳にかける仕草だけは許してやろう」
って勢いづいてみたものの、
♪「鴨川等間隔 橋の上 見下ろしながら見下される」
鴨川のカップルたちには全然ダメージはない。
この「見下ろしながら見下される」っていう表現に感心しきりの自分が、
友達にこの歌詞を教えたら、
「ただの被害妄想やん」
と一蹴されてしまった。
リア充の人間には響かないらしい。
くそぅ・・・
♪「在学生は塩田と俺か アイツはいいな 家を継ぎゃいいもんな」
1番との対比が美しい歌詞。
「俺」と「塩田」は大学生で、留年しちゃったようだ。
他の友達は卒業して新しい道を歩んでいる中で、
2度目の大学4年生の「俺」は、就職活動に焦ってるんかな。
一方の塩田は実家が商売をやってるみたいで、就職浪人の心配はなさそう。
でも、塩田は塩田で大変なんだと思う。
自分にとっての数少ない大切な友人を思い浮かべながら、
この2人が、社会に出ても一生いい友達でいることを祈りたくなる。
♪「砂利に足を取られ 腕絡めたあざとさは 許しはしない」
これまた1番の歌詞との対比が鮮やか。
髪を耳にかける仕草は許せたが、さすがに腕を絡める女子のあざとさは許さない「俺」。
けど、木津川の河原でBBQしながらはしゃいでいる男女グループにはやっぱりノーダメージ。
♪「別にどうしてほしいわけじゃない ただそれくらいの許容や容赦を 保てる心を育みたいぜ 幹から腐ったわけではないぜ」
岡崎体育節の真骨頂と言うべきか。
「俺」は、100%の陽キャにはなりきれないけど、完全な陰キャというわけでもなく、劣等感を力に変える強さと、怒りを心にとどめる優しさを持ち合わせている、いとおしいやつ。
この曲はフィクションで、「俺」=体育くんではないとわかってはいるけど、
なんでこんなにイケてないやつの気持ちを代弁してくれるんだろうか。
これからも岡崎体育には、「俺」みたいなオレの味方でいてほしい。
ちなみに、この曲は、いわゆるネタ曲ではないわけだけど、
MVに関しては、ツッコミどころが散りばめられていて、
それがまた岡崎体育らしい。
- 鴨川は一切登場せず、
- 申し訳程度にカモが川に入っていくところから始まる。
- 川岸は工事しててカップルたちは立ち入れそうにないし、
- パイプ椅子のかわりに公園のベンチだし、
- ヤンマガのかわりに公務員試験の問題集だし、
- 天むすのかわりに巻き寿司だし、
- PSPのかわりにゲームボーイカラーだし。
めっちゃ出汁とれた。
次は、「深夜高速」です。